Q&A104 預金債権は遺産に含まれるか

質問

相続人間で遺産分割協議をしていますが、協議が成立しない状態が続いています。遺産として、銀行の普通預金がありますが、この預金を私の相続分だけ先に払い戻すことはできないのでしょうか。

回答

かつては、銀行の普通預金などの可分債権は、相続開始により当然に、法定相続分に応じて各相続人に分割帰属するとするのが判例の立場であり、理論上は、一部の相続人が、自らの相続分に応じた預金の払戻しを金融機関に対して求めることもできるとされていました。

しかし、平成28年に最高裁判例が変更され、共同相続された普通預金債権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となると判断されました。
この判例の立場からすると、普通預金債権は共同相続人全員が承継することになるため、預金の払い戻しには全員の同意が必要となると考えられ、遺産分割協議が成立していない状況で、一部の相続人が、自己の法定相続分相当額だけ先に払い戻すことは基本的にはできないとされてしまい、不都合が生じていました。

そこで、相続人の資金需要に対応するため、令和元年7月1日に施行された新民法では、各相続人が遺産分割の前に一定額の預貯金債権を払い戻すことのできる制度が新設されました(909条の2)。
具体的には、
「相続開始時の預金債権の額(口座ごと)×3分の1(口座ごと)×当該払い戻しを求める相続人の法定相続分」
に限って、他の相続人の合意なしに、払い戻しが可能となります(ただし、1金融機関ごとに150万円が上限となります)。
たとえば、X銀行に被相続人の預金が900万あり、相続人がAとBの2人である場合、
Aは、900万円×3分の1×2分の1(法定相続分)=150万円を払い戻すことができます。

また、家事事件手続法の保全処分要件が緩和されたことにより、上記の制度で対応できない大きな資金需要については、裁判所の判断により、仮の払い戻しが認められる場合があります。
具体的には、家庭裁判所に遺産の分割の審判や調停が申し立てられている場合に、各相続人は、家庭裁判所へ申し立てて審判を得ることにより、裁判所が認定した額について、相続預金の全部または一部を仮に取得し、金融機関から単独で払戻しを受けることができます。

もっとも、当該払い戻しが認められるのは、生活費の支弁等の事情により相続預金の仮払いの必要性が認められ、かつ、 他の共同相続人の利益を害しない場合に限られます。

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